幼児期健忘
心理学における「幼児期健忘」とは?
幼児期健忘とは、一般的に3歳以前の記憶がほとんど残っていない現象のことを指します。
大人であれば、幼い頃の記憶を思い出すことができますが、3歳以前の記憶は断片的にしか残っていない、もしくは全く覚えていないことが多いです。
この現象は、19世紀末にオーストリアの精神科医であるジークムント・フロイトによって初めて提唱されました。フロイトは、幼児期に体験した性的・攻撃的な衝動や葛藤が、無意識の中に抑圧され、それが幼児期健忘の原因になると考えました。
しかし、近年ではフロイトの説だけでなく、脳の発達や記憶のしくみなど、様々な要因が幼児期健忘に関与していると考えられています。
#主な原因
海馬の発達: 記憶を司る脳部位である海馬は、3歳頃まで十分に発達していないため、それ以前の記憶をしっかりと保持することができない。
言語の発達: 言語は記憶を整理し、符号化するために重要な役割を果たす。3歳頃までは言語能力が十分に発達していないため、それ以前の記憶を言語的に表現することが難しい。
経験の蓄積: 3歳以降になると、様々な経験を積み重ねることで、記憶の整理や検索能力が向上し、過去の記憶を思い出しやすくなる。
#幼児期健忘と関連する研究
近年では、幼児期健忘に関する様々な研究が行われています。
フラッシュバルブ記憶: 特に印象的な出来事に関する記憶は、幼児期健忘の影響を受けにくいことが分かっています。
潜在記憶: 意識的には覚えていない記憶であっても、行動や感情に影響を与えることが示されています。
催眠による記憶の回復: 催眠を用いることで、通常では思い出せない幼児期記憶を思い出すことができる場合があります。
#まとめ
幼児期健忘は、まだ完全には解明されていない謎めいた現象です。しかし、脳科学や心理学の発展により、徐々にそのメカニズムが明らかにされつつあります。
幼児期健忘に関する研究は、人間の記憶のしくみや、意識と無意識の関係について理解を深めるだけでなく、教育や子育て、司法など様々な分野への応用が期待されています。
#参考URL
幼児期健忘 - Wikipedia
https://bs.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Na%C5%A1_odgovor_kriti%C4%8Darima
子どものときのことを覚えていないのはなぜ? | 日本心理学会
https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/record/49344/files/13447068_42_01.pdf
幼児期健忘と最初期記憶に関する研究の現在 - 甲南女子大学学術情報リポジトリ
https://accesson.kr/jkdp/v.32/2/149/18412
【記憶】幼児期健忘 - | 心理学の教科書・基礎からの心理学