心理学用語

分離脳

心理学における「分離脳」:左右の大脳半球を切断することで生じる脳の状態

分離脳とは、脳梁と呼ばれる左右の大脳半球を繋ぐ神経線維を切断することで、左右の大脳半球を機能的に分離した状態を指します。

分離脳手術

分離脳手術は、重度のてんかんの治療法として1960年代から行われてきました。てんかん発作の発生源が片側の大脳半球に限定されている場合、その半球を切断することで発作を抑制することができます。しかし、この手術によって、左右の大脳半球が情報伝達できなくなり、分離脳と呼ばれる状態が生じます。

分離脳患者の症状

分離脳患者は、以下のような様々な症状が現れます。

視覚情報の認識:

右目で見た情報は左脳に、左目で見た情報は右脳に送られます。分離脳患者は、片方の目で見た情報は認識できますが、もう片方の目で見た情報は認識できません。これは、情報が脳の反対側の半球に伝達されず、認識できないためです。

例えば、右目で見たリンゴを左手に持たせるように指示すると、患者は左手をリンゴの方へ伸ばすことができます。しかし、左目で見たリンゴを左手に持たせるように指示すると、患者は困惑した表情を見せたり、何も行動を起こさなかったりします。

触覚情報の認識:

触覚情報は、左右の体の両方の脳半球に送られます。しかし、分離脳患者は、片側の手で触れた情報は認識できますが、もう片側の手で触れた情報は認識できません。これは、触覚情報が脳の反対側の半球に伝達されず、認識できないためです。

例えば、右手にペンを持たせ、左手に紙を渡すと、患者は右手でペンを使って紙に書くことができます。しかし、左手でペンを持たせ、右手に紙を渡すと、患者はペンをどのように使えばいいのか分からず、困惑した表情を見せます。

感情の認識:

感情は、主に右脳で処理されます。分離脳患者は、左側の顔で表現された感情を認識できますが、右側の顔で表現された感情を認識できません。これは、表情情報が脳の左側の半球に伝達されず、認識できないためです。

例えば、右側の顔で喜んでいる人を見ると、患者も嬉しそうに笑います。しかし、左側の顔で怒っている人を見ると、患者は困惑した表情を見せたり、何も反応しなかったりします。

分離脳研究の重要性

分離脳研究は、左右の大脳半球がそれぞれ異なる機能を持っていることを明らかにしました。この研究によって、脳の機能に関する様々な知見が得られ、脳科学の発展に大きく貢献しました。

参考URL

分離脳 - 脳科学辞典

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v9/n6/%E3%80%8C%E5%88%86%E9%9B%A2%E8%84%B3%E3%80%8D%E3%81%8C%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%93%E3%81%A8/36734">

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